川上弘美『神様』



短編集。
表題作がプロローグ、その続編がエピローグ。
せつなさと仄かな毒。


『離さない』
 このまま永遠にいられるなら。
 それが変わらぬ人の願いではないのか。
 「離さない」
 その瞬間、主客転倒する。
 あれほどに手放したくなかった人魚から逃げ出す。
 「離さないでいるだけの強さがぼくにはなかったのかな」
 人とは、何かを従属させたいだけのいきものなのだろうか。